安心は、自分がつくる ~飯田市千代小学校~

年の瀬の12月11日、今年も長野県飯田市にジオラマ授業でうかがいました。
千代という、昨年の上久堅よりも少し南にある山間の地区にある小学校で、元気な男子ばかり4名の4年生です。今回組み立てたジオラマを使っていくつかの自治会で防災の集まりを行う予定ということで、近隣の町会の会長さんたちも一緒の授業となりました。

西端の天竜川(景勝地として知られる天竜峡のエリアです)から東端の山地まで、ジオラマ内の高低差は約1000m。そこを東西に米川が流れ下り、千代小学校はちょうど真ん中あたりにあります。
このあたりは令和5年6月の大雨で土砂崩れが発生し、人家の車庫が倒壊するなどの被害が出たエリアで、小学校の一部も土砂災害危険区域にかかっています。

まずは市役所の方からの「“備える”って何だろう?」という導入のお話しで今日の授業の目的をつかむわけですが、実は児童の中に上記災害時の被害住戸のお子さんがいることがわかりました。
そうしたこともあってかクラスの全員が、その時の雨の状況や帰宅の指示が出たタイミングなど、当日の様子を鮮明に記憶していました。会話の端々に出る言葉からも災害に対する子どもたちの意識の高さをうかがうことができ、そんな中で授業は進んで行きます。

ジオラマ授業の時間では、まずは皆でジオラマを組み立て、自分の家をマッピングします。周辺地形の特徴もあり、谷の中に自宅がある児童も多く見られました。
続いて危険そうな場所に付箋を立てていきます。子どもたちは前述の災害経験なども例に出しながら、土砂災害のリスクが身近にあることや、川もあるので水害のリスクもありそうなことなど、ひとり一人自分の言葉で気づいたこと・考えたことを発表してくれました。

その後ジオラマにクリアシートのハザードマップを載せて、実際のリスクを確認していきます。「学校ヤバいじゃーん」「俺ん家もヤバい」といった声が挙がる中、状況によっては必ずしも避難所(学校)に来る必要はなくて、学校も体育館ではなく校舎が避難所になっていることなどを皆で確認しました。
来年には中小河川の浸水リスクも追加掲載される予定であることなどもお知らせしつつ、色が付いていない場所でも災害は起こりうること、そのために日頃から周りの地形を防災的な目で観察することの大切さについても伝えました。

こうしてリスクについて学んだあとは、ふたたび市役所の職員さんから。
昨年もそうだったのですが、飯田市の危機管理課さんのお話は心に響きます。
災害時に自分が行動すること/みんなと支え合うことの大切さや、実際の場面でそれらができるかは災害前の暮らしが試されるということ。だからふだんの暮らしの中で、自分にできることを増やす、自分にできることをやる、みんなのことを考えることが大切だということ。
そんなお話を、能登での支援活動の経験やご自身の気持ちなども交えながら、とてもわかりやすく話してくださり、子どもたちも真剣な表情で聞き入っていました。

後日、児童の「振り返りカード」を見せていただきました。この日の授業のこと、彼らの心にしっかりと届いていたようです。
●僕は、最初、物を備えるだけだと思っていましたが、今日の授業で備えるということは、物だけじゃなくて、人と人とのかかわりも「備える」ということだと初めて知りました。
●色んな人を助けられるかっこいい大人。困っている人がいたら、迷いなく助けられる人になりたい。
●土砂災害が起きそうな場所がたくさんあって、想定外のことも考えることができました。
●ぼくは危機管理課のみなさんが、ニュースを見たりして、警戒レベル○○と発表しているとはびっくりしました。


帰り道、棚田百選にも選ばれている近くの「よこね田んぼ」を見た後、隣の豊岡村で「だんQオムライス」の看板を見つけてランチ。こちらは食べられるジオラマ!