津波を“来るもの”として考える 〜仙台市立荒井小学校〜

1月24日、仙台市の荒井小学校小学校にて5年生75名を対象にジオラマ授業を実施しました。
はじめに近隣の標高や地域の特徴、さらに作成していくジオラマの縮尺など、ジオラマを作る・見て考える上で大切になる前提の情報を学習していきます。

荒井小学校は、仙台市若林区の東部に位置し、近年発展が進む荒井地区にあります。この地域は、かつて広大な農地が広がるエリアでしたが、東日本大震災後の復興事業により新たな住宅地や商業施設が整備され、都市化が進んでいます。地名の「荒井」は、かつてこの地が広大な原野であったことに由来するとされています。周辺には仙台市地下鉄東西線の荒井駅があり、交通の利便性が向上しつつも、かつての農地や水田の面影を残す地域も点在しています。周辺の標高差は最大9メートルとなっており、標高差が少ないのも地域の特徴と言えます。

その後、3グループに分かれて、ジオラマを組み立てていきます。

海岸エリアを組み立てていく児童たち


震災後の嵩上げ部分を担当エリアに追加する様子


海岸から開発地域に伸びる東西に長いジオラマが完成

ジオラマが完成した瞬間から浸水エリアや被災履歴を友だちと話し出す子どもたちが多く見受けられ、東日本大震災で大きな被害があった地域だからこそ、日常的な話題として普段から話している様子が伺えました。その後、危なそうな箇所をそれぞれで考えて発表。災害発生後にどこに逃げるかやどう逃げるかまで考えて発表する児童も数名いました。

さて、今回はさらに、昨年度に若林区で作成していた南側のエリアを合体することで、名取市まで跨ぐ広域のジオラマにしていきます。広い範囲のジオラマとなったことで、自分たちの住んでいる場所が海と接している地域であることや集団移転をしたことなどがより明確になりました。
また、ジオラマに、嵩上げ道路や避難の丘などのパーツを載せながら、震災後に津波に備えて行われた地域の整備状況についても学びました。

今回の防災ジオラマづくりを通じて、荒井小学校の子どもたちは、自分たちの地域の防災についてしっかりと考えてくれました。講師の「明日、災害が起こるかもしれない」という問いかけに、普段以上に多くの児童が手を挙げたこと。また、講師の被災体験に対して、「津波は本当に怖いのか?」「どんな状況だったのか?」と次々に質問が寄せられ、時間が足りなくなるほど関心を持っていたことが印象的でした。
「津波が来るかもしれない」ではなく、「津波は来る」という前提で考えたとき、私たちはどう行動するべきなのか。ジオラマで過去の津波被害の痕跡をたどりながら、より安全な避難経路を自分たちで発見しようとする姿も見られるなど、地形の特徴を見ながら、「どこが危険か」「どこへ逃げるか」を具体的に考えることができたのがよかったです。
授業をとおして防災を「自分ごと」として考えてくれた子どもたちが、家族の中で防災について話し合うきっかけをつくる存在になってくれればと願っています。